天然大理石と人工大理石と人造大理石の違い
<<目次>>
1,天然大理石
天然大理石とは学問的に、
第1分類:変成岩、第2分類:接触変成岩、第3分類:結晶質石灰岩に分類される石種が多いのですが、
第1分類:堆積岩、第2分類:化学的沈殿岩、第3分類:石灰岩に属するトラバーチンやペルリーノ、
第1分類:火成岩、第2分類:深成岩、第3分類:蛇紋岩に属するグリーン色のジャモンと呼ばれる石材なども天然大理石と呼んでおります。
厳密に言うと、それらの石材をまとめて天然大理石とは呼べないのですが、ここでは見た目大理石と言える石材で、
天然石100%のものを天然大理石と総称しております。
天然大理石には細孔と呼ばれる細かな穴が無数にあります。
細孔とは岩石の内部に閉じ込められた水分が蒸発して出来たものだと言われています。
その細孔に水分が入り汚れが付着します。この現象が天然大理石のシミになっていきます。
細孔には石の内部に小さい穴があり外部に通じてない状態(閉孔)のものと、外部に通じている状態(開孔)のものとがあります。
閉孔に水分が溜まるとカビやコケ等の発生の原因にもなり、開孔に水分が溜まると色ムラ等の原因にもなります。
石材を切断したり、研磨するときには大量の水を使用しますが、
その後乾燥してから出荷するまで、完全に水分が蒸発することはありません。
そして完全に乾燥したとしても天然大理石には無数の細孔が存在する以上、空気中の水分が常に細孔の中に出たり入ったりします。
外部に使用した場合や、雨季には当然水分が細孔の中に入るので、天然大理石はそのままにしておくと劣化していきます。
2,人工大理石
人工大理石とは、アクリル樹脂やポリエステル樹脂を主成分とした人工素材で、大理石や天然石の粉や成分は全く入っていません。
大理石の代用品としてキッチンの流しや洗面台、浴槽などに広く使用されています。
加工性や着色性に優れ、型があれば量産性にも優れ、コストパフォーマンスにも優れます。
割れにくくて耐久性もあります。
したがってステンレス製とともに、住宅用流し台としては最も広く使用されています。
天然大理石と比較すると、柔らかくて傷つきやすく熱に弱いです。
型が必要になるメーカー品は、1点ものの特注品には対応が難しいです。
また主成分が樹脂なので、天然大理石の高級感や風合いは無く、無機的な感じになりやすいです。
自然消化しますが可燃物ですので、燃焼すると不完全燃焼により一酸化炭素等の有毒ガスを発生します。
近年、耐熱性や耐水性、耐摩耗性などが、天然大理石や今までの人工大理石を遥かに上回る特性を持った、人工石の素材が開発されています。
それらの素材は、鉱物粒子を焼結させたいわゆるセラミックの部類に入るセラミックストーンと呼ばれるものや、石英と樹脂を真空振動プレスで仕上げたクウォーツストーンと呼ばれるものなどがあります。
共通するのは天然大理石のスラブ材のような大きい板材で、厚みも12mm以下と軽く、用途は天板だけではなく床や壁にも使用できるということです。
高機能人工石の標準サイズと適用場所
【高機能大版セラミックスラブ】
ガルザス(3,000㎜ × 1,000㎜ × 5.6mm 天板・壁)
開発 日本 ㈱サンゲツ
特長 【抗ウイルス、抗菌、耐摩耗性、耐衝撃性、耐熱性、耐火性、耐水性、耐汚染性、対薬品性、耐錆性、防火性能】
【高機能クウォーツストーン】
サイルストーン(3,060㎜ × 1,400㎜ × 12mm 天板・床・壁)
開発 スペイン コセンティーノ社
特長 【耐汚染性、耐酸性、耐衝撃性、表面硬度】
【高機能セラミックストーン】
デクトン(3,200㎜ × 1,440㎜ × 12mm、8mm 天板・床・壁)
開発 スペイン コセンティーノ社
特長 【紫外線抵抗性、耐寒性、耐錆性 、素材安定性、防火性能 、耐火性、耐熱性、耐摩耗性、摩擦抵抗性、耐水性、耐汚染性、撥水性】
【キッチンワークトップ比較表】
| 耐熱性 | 耐酸性 | 耐汚染性 | 耐衝撃性 | 耐久性 | デザイン性 | 価格 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 天然大理石 | ○ | △ | ○ | ○ | ◎ | ◎ | 高価 |
| 天然御影石 | ○ | ○ | ○ | ○ | ◎ | ◎ | 高価 |
| セラミックストーン | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | 高価 |
| クウォーツストーン | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ○ | 高価 |
| アクリル系人工大理石 | ○ | ○ | ◎ | ○ | ○ | ○ | 高価 |
| タイル | ◎ | ○ | ○ | △ | ◎ | ○ | 安〜高 |
| ステンレス | ○ | ◎ | ◎ | △ | ◎ | △ | 安価 |
| メラミン | △ | ○ | ○ | × | △ | ○ | 安価 |
3,人造大理石
人造大理石とは、天然の大理石などを粉砕し、セメントや樹脂で固めた半人工素材です。
セメントで固めたものをセメントテラゾー、樹脂で固めたものをレジンテラゾーと呼びます。
大理石の代用品として広く使用されていました。

セメントテラゾー

レジンテラゾー
テラゾー(terrazzo)とはイタリア語でテラッツォ、それをローマ字で発音するとテラゾーとなります。
テラゾーはイタリア発祥で、自然石を細かく砕いた骨材と顔料などを混錬して塗り付けた後、表面を研ぎ出して仕上げます。
この製造方法は現場テラゾーいわゆる「現テラ」と呼ばれ、仕上げに研磨作業が必要なので、浴槽などの複雑な形状には適さず、主に板状の製品が外構や壁材、床材、テーブル材等として使用されました。
その後、高圧なプレスによる締め固めと真空引きによる水分の排除により、高強度・高耐久性のセメントテラゾーも製造されています。
イタリアやスペインで400角のタイル状になったレジンテラゾーが輸入されましたが、これは主に床や壁で使用されました。
日本では通常テラゾーといえば現場テラゾーのセメントテラゾーのことです。
セメントテラゾーも前もって工場で400角に製品化したセメントセラゾータイルがありました。
この製品はテラタイルと呼ばれ厚みが30mmで強度もあり、駅の床などで多く使用されました。
セメントテラゾーの施工現場で有名なのは、観光名所のハリウッド・ウォーク・オブ・フェームです。
ハリウッド・ウォーク・オブ・フェームはハリウッド大通りとヴァイン通り沿いの歩道の床に、
1960年からエンターテイメント界で活躍した2000人以上の人物の名前が星型のプレートの中に埋め込んであります。
ハリウッドで使用されたからかどうかはわかりませんが、その後、そのようなお洒落なテラゾーが日本でも公共施設などで使用されてきました。
地下鉄の駅のコンコース、美術館や学校など、広い公共スペースの床に床材として使用されてきました。
そして床材としてだけではなく、公共のトイレにも使用され、駅のトイレや学校のトイレなどは、トイレに入るとライニングトップやトイレブースにもテラゾーが使用されていました。
トイレブースは40mm厚のテラゾーで製作してあり、そのテラゾーのブースがトイレの間仕切りでした。
テラゾーはトイレで使用されるイメージが強かったせいか、いつの間にかハリウッドのお洒落さは忘れ去られてしまい、
逆に「不潔・うす汚い・低級・下品」というようなイメージを与えました。
しかし、そのようなテラゾーのイメージを払拭したのは、1980年代前半、当時活躍され椅子のミス・ブランチでも有名なデザイナーの倉俣史朗さんかもしれません。
倉俣史郎さん考案の「スターピース」はカラーガラスのチップが入ったテラゾーです。
今までのテラゾーのイメージとは全く違った素材となり、「スターピース」は当時日本中のISSEY MIYAKEのブティックで使用され一世を風靡しました。
イタリア発祥で、ハリウッドで今も使われ続けているテラゾー。
そのテラゾーで、また日本から世界を震撼させるような新製品が開発されることを期待したいです。

ハリウッド・ウォーク・オブ・フェーム

スターピース

スターピース

ミス・ブランチ
脚数が56脚しかなく、そのうちの数脚はMoMA(ニューヨーク近代美術館)やヴィトラ・デザインミュージアム、
サンフランシスコ近代美術館、パリ装飾美術館などの美術館に
永久コレクションされており実際に取引されている数は56脚よりもかなり少なく、
サザビーズなどの海外のオークションでは1000万以上の値がつき、ピーク時には5000万円を超えていたとも言われています。

